Matsの活動記録

海外国内メンタルヘルス情報を発信する活動をやってみる、新薬、最新研究等

統合失調症 治験データ解読の目安

目次

 

抗精神薬は、治験のときにいろいろな尺度を使って効果が測られています。陽性症状、陰性症状統合失調症に伴う他の症状、などへの効果が測られています。ルマテペロンは、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、CGI-S(臨床全般印象-疾病重症度尺度)、PSP(個人的社会的機能遂行尺度)、CDSS統合失調症抑うつ評価尺度)などを使って効果が測られました。

 

それらの尺度の中でLSMD95%信頼区間効果量p値などの数字を使って、統計で、抗精神薬の有効性が測られています。

 

 

今回はルマテペロン42mgのPANSS合計スコアのLSMD(最小二乗平均値差、調整済み平均値差、Least-Squares Mean Difference)の計算の仕方を書き、効果量、p値は、どれくらいなら統計的に有意なのか、解読の目安を書きます。

 

LSMDの計算の仕方

  ルマテペロン42mg(28日後) プラセボ
PANSS合計スコアのベースライン平均値 89.8 89.8
投与28日後におけるPANSSスコア平均値 74.2 77.4
投与28日後におけるベースラインからの変化量 平均(Mean、M) -15.6 -12.4
LSM(調整済み平均、最小二乗平均、Least-Square Mean) -14.5 -10.3
     
LSMD(Least-Square Mean Difference)(プラセボとの差) -4.2  
(LSMDの95%信頼区間 (-7.8~-0.6)  
効果量 -0.3  
p値 0.02  

 上の表を使って説明します。ルマテペロン42mgを飲んだ人のPANSS合計スコアのLSMD値-4.2の出し方は次のようなものです。

 

まず、ルマテペロン42mgを飲む人とプラセボを飲む人、各150人位が選ばれます。それから、治験をする前にベースライン(基準値)というのを測ります。

 

下のリンク先の記事で説明した通りにPANSS合計スコアを測ります。そして治験者300人の平均をとります。89.8という数字が出ました。これがPANSS合計スコアのベースライン平均値です。(表の2行目)

PANSS 陽性陰性症状評価尺度 - Matsの活動記録

 

 

そして、28日後に治験が終わった後、再びルマテペロン42mgを飲んだ150人位と、プラセボを飲んだ人150人位の人それぞれのPANSS合計スコア平均値を測ります。それぞれ順に、74.277.4と出ました。(表の3行目)

 

投与28日後におけるベースラインからの変化量平均(Mean、M)はルマテペロンが-15.6プラセボ-12.4という事になります。(表の4行目)

 

そして、いろいろな誤差を修正し、正確な平均値を出すために、調整済み平均値(最小二乗平均値、Least-Squares Mean、LSM)というのを出します。それぞれのLSMは、-14.5-10.3となります。(表の5行目)

 

このルマテペロン42mgのLSMとプラセボのLSMの差を計算して、LSMD(最小二乗平均値差、調整済み平均値差、Least-Squares Mean Difference)を出します。-4.2です。

 

この-4.2がルマテペロン42mgの有効性の度合いを表します。絶対値が大きい程、効果があります。-4.2程度でも有意に改善と評価されています。

 

他の薬のLSMDの値も比較のために探したのですが、あまりみつかりませんでした。辛うじて、48日後のLSMDがいくつかの薬でみつかりました。(ルマテペロンは28日後の数字なので、相対的に絶対値が小さめにでています。)

PANSS合計スコア カリプラジン6mg(48日後) リスパダール4mg(48日後) エビリファイ10mg(48日後)

ルマテペロン42mg(28日後)

プラセボとの差(LSMD) -10.9 -12.7 -7.5 -4.2
(LSMD 95%信頼区間 (-17.4~-4.5) (-20.6~-4.7) (-14.7~-0.3) (-7.8~-0.6)
有意水準 p値 0.001 0.002 0.0416 0.02

 

 

95%信頼区間(CL)について

これも統計用語です。ルマテペロンのLSMDの95%信頼区間(-7.8~-0.6)の意味は、もし誰かがルマテペロンを飲んだとしたら、95%の確率でプラセボとの差が-7.8から-0.6の間におさまるという事が起きます。逆に言うと5%は-8.6とか差が大きくでたり、-0.3とか小さくでたりするということです。

効果量について

効果量(effect size)は、平均値と標準偏差からだけで計算できます。一番簡単に言って、「差の程度」を表します。絶対値が大きい程、薬の効果があると評価されます。一般的に、効果量が-0.5だと大-0.3だと中-0.1だと小と有効性が評価されます。-0.20程度では有意と評価されなかったり、-0.24程で有意と評価されたりします。

ルマテペロンのPANSS合計スコアの効果量は、-0.30です。一般的に言って中程度ですが、PANSS合計スコアは有意に改善と評価されています。他の薬のPANSS合計スコアの効果量でわかるものをいくつかあげておくと、レキサルティが-0.26カリプラジンが-0.34ルラシドンが-0.36です。

 

p値について

p値は0.05以下だと有意に改善とされます。p値は数字が小さくなるほど、有効性があると評価されます。ただ、サンプル数の大きさによって、結果に差が出てしまいます。サンプル数を大きくすると、p値は小さくなる傾向にあります。

ルマテペロンのPANSS合計スコアのp値は0.02です。0.05より小さいので、有意に改善と評価されています。例えば、カリプラジンはp=0.001で、リスパダールはp=0.002エビリファイはp=0.0416です。いずれも、p=0.05より小さい値になっています。